数年前、山形県のしょうない地方を一人でドライブした時の話。
10月下旬頃の、夕暮れ時のこと。海岸沿いのドライブインに入り、日没を見ながら休憩していたら、変なモノを見た。
離れたところの岩場の先端に、なにやら人影のようなものが見えた。釣り人だろうか、と思ったが、どうも様子がおかしい。
目を凝らしてみると、なにかずっと動き続けているようだった。オレの知っているものに例えると、阿波踊りが一番近かったように思う。
両手を上に上げて、ゆらゆらと、ゆれ動いているように見えた。ただ、リズムは一定ではなく不規則で、見ていて不安を呼び起こされるような、そんな動きだった。
近づいて確かめてみようかと思ったが、岩場への降り口が見つけられず、そうしているうちに、あたりはどんどん暗くなってしまい、その人影のようなものも、見えなくなってしまった。
すっきりとしないままその場を後にし、以来その場所を訪れる機会もなかったため、あれがなんだったのか、見間違いなどではなかったのかなど、確かめられずにいたが、最近、近い印象のものに行き当たった。
「くねくね」、だ。季節は晩秋で、場所も海辺だが、水辺ではある。
もしあの時が日没時ではなく、あれをじっくりと確認できていたら、あるいは今こうしてはいられなかったかも知れない。